再建築不可ー。
不動産に携わる者であれば、この言葉を聞くと思わず立ち止まって「どれどれ…」と上から目線で物件チラシを眺めたくなることでしょう。
物件に何らかの問題があり建替えができない土地は二束三文で売り飛ばされますが、その建替えができない問題さえ取り除けば、突如としてお宝物件に変貌…。
そうなんです、再建築不可の物件はまさに不動産投資における宝くじみたいなものなのです。
今回は楽待さんのYouTubeチャンネルで、とある土地の再建築を巡ってオーナーと行政とが裁判で争った動画を視聴して、感じた私なりの考えを述べていきます。
- 不動産歴20年のフリーランス
- 投資家(不動産14年、株式3年)
- 運用投資総額は約3,000万円
この記事を読むと、以下のことがわかります。
- 再建築不可に絡む不動産投資について
ぜひ最後までご覧ください。
駅前なのに「再建築不可」…オーナーが市を提訴、結末は?・本編とあらすじ
まずは楽待さんのYouTube動画と、あらすじについて簡単にまとめていきます。
駅前なのに「再建築不可」…オーナーが市を提訴、結末は?・本編
それでは早速、楽待さんの動画を観てみましょう。
「駅前なのに再建築不可」と大々的に謳っていますが、駅前だろうと駅から離れていようと建替えのための要件は関係ないんですがね。
今回の登場人物は東京都内を中心に一棟アパートや戸建を所有する、不動産投資家の見坊さん。
10年前から家業の不動産業を引き継いだ見坊さんは、4年前にとある駅前の一等地を購入しました。
見坊さんは見るからにいい人そうで、あまり不動産投資家っぽく見えませんね(偏見か)。
この動画では駅前の土地を巡って、そんないい人っぽい見坊さんが市を訴えることになるのです。
駅前なのに「再建築不可」…オーナーが市を提訴、結末は?・あらすじ
不動産投資家の見坊さんが4年前に1,500万円で購入した土地は、下の図のように八街市の私有地(バスロータリー)に面しており、裏の路地も建築基準法上の道路と認められていないため、接道要件を満たしておらず現状では建替えができません。
本物件では20年以上前から継続的に運送会社の車両が八街市の私有地(バスロータリー)を経由して出入りしていたこと、さらに八街市が本物件前に12mの歩道の切り下げ工事を行っていたことを具体的根拠として、見坊さんは八街市に対して通行地役権を認めるよう訴えます。
仮に通行地役権が認められれば、本物件の建替えに一筋の光明が見えてくるため、見坊さんは3年がかりで裁判に臨みますが、結果は…。
見坊さん敗訴
裁判所は見坊さん側の訴えを退け、本物件の通行地役権を認めない判決を下します。
これにより見坊さんが1,500万円で購入した本物件は、現状ベトナム食材店に月額55,000円で賃貸する表面利回り4.4%、再建築不可の●ソ物件を掴んだことが確定しました。
動画で気になった点と所感
「ひょっとしたら建替えできるかも…」との甘い思惑が吹き飛んだ見坊さんですが、過酷な現実が待ち構えていました。
ここからは視聴者のみなさまの大好きな、人の不幸は蜜の味ともいえるメシウマ展開です。
辛辣な専門家のコメント
敗訴の結果を受けて、本物件の土地は固定資産税評価額が【2,000万円⇒600万円】と、3分の1以下に激減。
また本物件の実勢価格について、不動産鑑定士の辛辣なコメントに目を引かれました。
この不動産鑑定士によると、八街市内で再建築不可の土地は100万円から150万円で取引され、主に駐車場や資材置き場として利用されるのが一般的らしいのですが、今回は車両の出入りが認められないため、それらの利用を見込めないとのこと。
コメントは適宜編集されているようですが、前後の発言からすると4年前に見坊さんが1,500万円で購入した本物件の実勢価格は、20万円から50万円と評価したであろうことが窺えます。
98%の大暴落♪
さすがにこんな大赤字では損切りできないでしょうから、見坊さんもウン十年かけて少しづつ回収し、いつか建替えできるシチュエーションが整う展開を期待するしかないでしょうね。
敗訴の後、800万円かけて整地したという見坊さんに一抹の不安も
この見坊さんの整地について、株式投資における格言でもある「ヘタなナンピン、素寒貧(すかんぴん)」にならなきゃいいのですが…。
所感
Google mapで本物件を確認すると、確かにJR総武線の八街駅の真ん前で立地は良さそうです。
しかし前面道路が完全に八街市の私有地(バスロータリー)というところに、違和感を覚えずにはいられません。
普通の不動産投資家であれば勝算なしに再建築不可の土地に手を出すようには思えませんが、見坊さんはただ「駅前の土地だから」という理由だけで購入に踏み切ったのであれば、これはもはや自業自得かと。
見坊さんは稀代の投資家か、それとも●ホなのか
もし私が再建築不可の土地を買うなら、最悪ゼロになってもいいくらいの投資額で、しかも何十年という長期戦覚悟で臨むと思います。
再建築不可が建築可の土地になるためには、物件の相隣関係者との間のパワーバランスの変化を必要とすることが多く、たかが数年でこちらの思惑通りに事が運ぶとも思えません。
首を縦に振ってくれない頑固者がいれば、それは信長や秀吉のやり方ではなく、家康風の「鳴く(タヒぬ)まで待とうホトトギス」的なスタンスで臨まないとダメでしょう。
不動産投資はとにかく時間がかかる
駅前なのに「再建築不可」…オーナーが市を提訴、結末は?・おわり
土地の価格は原則として、その土地の上に建築物が建築できることを前提として値付けされます。
したがって再建築不可の土地であれば、ウワモノを貸して収益を得る不動産投資家にとっては、購入にあたり慎重すぎるほど慎重でなければなりません。
でもなんなんですかね、見坊さんはすごく行き当たりばったりな感じがするんですよね。
よくこれで不動産投資界隈で生きてきたなぁ…と思われずにいられません。
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